ルコバンド


2012の6月頃、airbabeはメンバー、演奏がすべて仮想のバーチャルバンドのプロデュースをはじめました

UTAUという合成音声ソフトの情報を追いかけてニコニコ動画を漁るうちに、MMDという3Dソフトや、ボーカロイドシーン、そこに広がる果てしない創作コミュニティの存在を知ってすっかり夢中になっていました

ボーカロイドソフトを使い曲を作る動画投稿者はボカロP/UTAUP(PはプロデューサーのP,アイドルマスターの動画投稿者への呼称がルーツらしいです)と呼ばれ、

自分の気持ちを代わりに歌わせたり、理想の初音ミク像を作り上げたりしていました

airbabeはそこで何をしたかったかというと、この広大な世界のバックグラウンドに乗っかって

バーチャルな街の片隅の小さなライブハウスで演奏していそうな、インディーズガールズロックバンドをプロデュースしたいと思ったのでした

ボーカロイドを単体でアイドルのような存在としてプロデュースしているPは沢山居ましたが

当時、オリジナルでバーチャルバンドという形態はじろうさんというUTAU動画投稿者のTOBEFOOPERSというバンド創作以外の作品は見当たらなかったように思います(それ以前を正確に調べたわけではないので他にも居たのかも知れません)

そういった形態のPがもっと沢山ぼこぼこと登場して、仮想の町でバンド同士が対バンするなどという妄想を楽しみながらいくつか投稿を続けていました

UTAU音源のはじめは重音テト、欲音ルコを使ってバンドを結成したのですが、声の個性がぶつかりあって失敗、解散、テト代わりに雪歌ユフが参戦して現在の形に

弱音ハクというキャラクターはボカロ界においては不遇の存在だと思っていました

ボカロではないので自分の声や歌は持っていないし

いつも自分の創った曲に自身が持てずお酒を飲んでうなだれているといった、マイナーボカロP達の心象を具体化したようなキャラクターでした

自身がドラムをちょっとだけ齧っていた事もあって、思いの象徴としてのハクと言うキャラクターをドラムの、バンドのリーダー的ポジションにどうしても置いてあげたかったのです

メンバーをUTAUのキャラクターだけで構成しなかったのはそういう理由からです

後、ソーホーというUTAUベース音源、地味音オトセという魅力的なキャラクター、色々入れたくなって世界が膨れ上がってローディー役にしてみたりPAを任せてみたり...

自分で漫画や小説は書いたりできないのですがMMDを使うことでそれに近いような、ごっこ遊びが出来ることが嬉しくて仕方ありませんでした


音源さえ使用していますが、多分ルコバンドでの欲音ルコはUTAU音源の「欲音ルコ」ではないのだろうと思っています

生真面目で真っ直ぐでちょっと臆病な「Ruko」というまた別の世界の姿なのだと思います

他のUTAUにしてもそれは同様です

音源提供者さんやキャラクターデザイナーさんたちが作り上げた世界に則った

2次創作の世界だったのだと思います


はじめは3曲投稿したら投稿は終わろうと思っていました

自分のDTM能力の拙さを、彼女たちの演奏能力のせいにするには3曲ぐらいが限界かなと思っていたし、やってみたかったことをクリア出来たらそこでもう満足してしまうだろうと思っていたのです

でも、soundcroudでインスト曲をアップロードして1年間放置してもほぼ反応のないような砂漠暮らしをしていた自分にとって、ニコニコ動画のコメントやマイリス、広告といった環境はあまりにも甘い、刺激的な環境でした

反応がもらえるのが嬉しくて気がつけば数年が過ぎ、いつしか投稿はライフワークのようになっていました

同時にその頃から欲のようなものも芽生え始めました

ポツリ、ポツリと僅かに応援してくれるひとが増えるたびに、自分の能力の無さ、人気のなさに劣等感を感じて息苦しさを感じるようにもなりました

もっと人に聴いてもらいたい

人気のあの人達とは何が違うのだろう

DTM能力、調声、PV演出、自分は何がどのくらい劣っているのだろう

今思えばそういって比べることも間違いでした

twitter芸、SNS暴言、炎上、馬鹿みたいな桁の再生数、ランキング工作、大量広告、神絵師との積極的な交流、ネタ曲、学級会、テレキャスターのカッティング、人間のトレス、人気音源、無地背景制服少女の一枚絵、邦楽モドキ、歌い手コラボ、顔出し

全部やればいいことも解っていました

それこそがニコニコ動画で、それこそがUTAU/ボカロのメインストリームでした

それをやらないやつは腑抜け そんな歌が流行っていました

腑抜けな自分には無理でした

それは音楽や創作以外の活動を必要とされる世界だったからです

実際もうUTAU勢は同じ流れのV-tuberへと世界を移行しています

音楽じゃなくてもいいのです

UTAUじゃなくたって

遊び道具を変えて馴れ合えるならば何でも


急激にひどく退屈になりました

UTAUでBANDも自分の中でもう新しい事柄ではなくなってきました

そんな空気もあってか、ぽつりぽつりと聴いてくれる人が減っていきました

その頃のニコニコ動画のサービスの低迷も拍車をかけていました

アカウントは消え

ニコニコ自体を去る人達も沢山見ました

広告をいつも欠かさずくれていたあの人でさえ


とうとうだれもUTAUのことに触れなくなってしまいました

それでもまだUTAUを触り続けていました

BANDの代わりにairbabeが”浮気”と名づけたフォルダーへの投稿が増えていきました

視聴者のことを一切考えない完全に自分だけの世界の作品作りです

youtubeへも投稿を始めました

ぽつり、ぽつりと海外の視聴者がメッセージをくれるようになりました

また、1からやり直しです


このアルバムは、一番UTAUが楽しくて仕方なかった頃の思いが沢山詰まっています

色々拙かったり、今聴くと自分でも赤面してしまうようなものもあります

でも、きっと一番いい時期の楽曲たちです

良かったら聴いてくれると嬉しいです


きっとこんなことを書くと誤解されたり、失望される方もいるかもしれないのですが

本当はこのアルバムを作るのは正直苦痛で仕方無かったことを告白します

新しい曲を書くのならともかく

過去の曲を再編集する作業だけのために只でさえ少ない日常生活の創作の時間を削り取られることが苦しくて、何度もやめてしまおうかと思いました

誰かのためだけにするという創作は結局自分にとっては不毛なことです

それが自分にとっても相手にとっても楽しければもちろん作業ははかどるのですが

自分にとって常に目新しさや作業の楽しさの力を借りなければやり遂げることはむづかしいのです

出来上がったそれを期待している声がほぼ皆無ならなおさら、です


でも一人、アルバムがほしいといってくれたあなたがいて、約束しました

だからその約束は守りました

モチベーションの拠り所はそれだけでした

これは創作の動機としてはけして健全な状態とはいえません

そのまま放置して次に行きたくなかったのです

あなたの期待した楽曲は入っていないかもしれません

もう待てなくて去ってしまった後かもしれません

ただどこかで聴いていてくだされば幸いです


今後どうするかは未だ決めていません

メンバーと話し合って決めたいと思います

サボテン枯らしちゃった

合成音声音楽のこと、動画のこと

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